手術について
変形性膝関節症手術
変形性膝関節症とは
現代人の「健康寿命」を脅かす大きな原因である「関節痛」。その中でも代表的な病気である「変形性膝(ひざ)関節症」の潜在患者数は約3,000万人(*注1)と言われ、早期に発見し、適切な治療を行うことで痛みのない生活を取り戻すことができます。変形性膝関節症は、膝関節の曲げ伸ばしや衝撃を緩和する役割を持つ軟骨が加齢や体重増加などによってすり減り、骨と骨がぶつかって痛みや炎症を起こす病気です。治療法には多様な選択肢がありますが、初期では立上がりや歩き始めに痛みを感じ、進行すると痛みで歩行が困難となります。そのため、重度になれば手術によって痛みを取り除く治療法が選択されます。
(*注1)
厚生労働省「介護予防の推進に向けた運動器疾患対策について」報告書 平成20年7月 介護予防の推進に向けた運動器疾患対策に関する検討会
変形性膝関節症の治療法
初期であれば膝の負担を減らすために、減量や筋肉を鍛える運動療法などを行います。痛み止めの服用やヒアルロン注射などの薬物療法もありますが、これらで痛みが軽減しない場合は手術を検討します。
年齢が比較的若く活動性の高い方には、骨を切って脚をまっすぐに矯正する「骨切り術」を選択します。自分の関節を残すことができるため、術前とほぼ同様の膝の可動域が確保できるのが利点です。
一方、高齢で活動量が多くない方の治療法には「人工膝関節置換術」を選択します。痛みや腫れを取り除き、変形を矯正する効果が高い手術です。関節の一部だけが傷んでいる場合に一部を人工関節に置き換える「部分置換術」を選択します。
膝全体がすり減り変形が顕著な場合は、関節全体を人工関節に置き換える「全置換術」を行います。
いずれも手術の翌日から立つことができ、入院期間は4~6週間程度です。退院後は激しいスポーツを避けていただきますが、旅行や農作業などの仕事、趣味ができるようになり、痛みから解放されてより自分らしい生きがいのある生活を取り戻すことが期待できます。
人工膝関節置換術とは
人工膝関節置換術は、およそ半世紀前から行われている代表的な変形性膝関節症の治療法です。技術の進歩により、長期にわたる治療効果が報告されています。医療技術の進歩で耐久性に優れた人工膝関節の新素材が次々と開発されています。近年はテクノロジーの進化で、執刀医がより正確に安定した手術を行えるよう補助する「手術支援ロボット」が導入され、2020年7月よりこれを使用した手術が保険適用となり、高額療養費制度の対象となりました。
期待されるメリット
人工膝関節の設置精度は、術後の長期成績や日常生活動作に影響するといわれており、手術支援ロボットの活用によって手術の精度が担保されることで、術後の患者さんの満足度の向上および人工膝関節の長期耐用性が期待されます。更には、あらかじめ決められた通りに微小なズレなく的確な骨切除ができるので、より少ない侵襲で患者さんの負担軽減が期待できます。